小川 なつみ
大学4年生
「最初は直感、それから考える、それでまた直感、それでいいやって思えた」
―卒業だね。思ってた大学生活だった?
いや。もともと留学したいと思って大学を選んだので、入学前はこんなにガッツリとラボ※をやるつもりはなかったです。(キャンプを企画・運営する)コーチ活動にも大学生活動にも憧れていたので、大学生活動自体はやるかなと思ってましたけど、こんなにラボをやるとは思ってなくて。
それこそ1on1始めたくらいのときは世界を広げるべき大学生活で逆にラボしかやっていないことに迷ったときもありました。でも本当に留学に行きたかったら仕事を辞めたり休んだりしても行けるだろうけど、社会人になったら仲間とこんなに切磋琢磨しながらラボをすることはない、これこそいましかできないって思ってからは、全振りしてよかったなと思います。最高だったなって。
※ラボ:ラボ教育センターが提供する、言語教育を主とした表現活動、国際交流、キャンプなどの教育プログラムの総称。
―なにがそんなに楽しかったの?
もともと自分のレベル上げが好きなんですよ。いま考えてみれば、部活でもバイトでもレベル上げはできましたけど、ほかのコミュニティでは自分の立場もこのくらいで、だからこのくらいの行動でいいと割り切っていたのかも。ラボが好きだったからラボに気持ちが向いていて、ラボとかコーチ会議になっちゃうと最大限でやりたくてしょうがないみたいな。好きだったから、が結局は根本だと思いますね。
ラボもキャンプも、嫌だと思ったことはなかったと思います。キャンプが楽しい、今度は中高生活動とか支部に出るのが楽しい、シニアメイト(キャンプでのグループリーダー)をやって楽しい、みたいにどんどんできることが増えていくのは楽しかったし、やっぱり大学生になってコーチ会議に入ったらぶつかる壁も大きかったぶん、急速に成長している実感があったんだと思います。
途中からは自分の成長だけじゃなくて周りの成長にも関わるようになって、またそこから自分が一歩レベルアップしていくのが楽しくて。だから、いまも最後までできることを探してますね。
―大学生になってからの壁は大きかったんだ。
大きかった。大学2年生の夏から冬にかけて、自分の根本的な部分ですごくうまくいかなかった時期があって、性格を変えなきゃいけないなと思ったことがありました。わたしはプライドが高くて、こだわりも強い。レベル上げが好きとか、上昇志向が高いことは悪いことではないんですけど、当時はすごく自分よがりだったなって。
キャンプは集団生活じゃないですか。ただ集団生活をするだけだったらわからなかったけど、キャンプの運営もしなきゃいけない集団生活をするとなると、自分のプライドの高さが裏目に出ちゃって。キャンプの中盤で仲間からフィードバックを受けて、キャンプの後半で直そうとしたけどまた同じことを言われて。もしかして治らないのかなと気にしちゃって…。
―なにが起きたの?
たとえば、忙しくなって自分の仕事がちゃんとできてなかったのに人に頼れなかったり、自分の意見が強すぎて誰かの発言を遮っちゃったりしてたんですよね。些細なことですけど、やっぱり気持ちよくないじゃないですか。
それから人の話も一度は肯定することから始めて、最近は人の話を聞くことが真ん中にくるようになった気がします。この人はどういう考えで、どういう価値観で、だからいまこれをやっているんだなって、一度聞いてから行動できることが多くなった気がしますね。
―自分の根本的な性格に疑問を持つって苦しそうなことなんだけどさ、よく超えられたね。
いやー、そうですよね。苦しかったんですけどね、そのとき。でもやっぱりこのままじゃダメだなと思ったんだろうな。そのときちょうど、次年度にコーチ会議のヘッド(責任者)になることを見据えていたこともあって、人の上に立つことを考えたら自分勝手なリーダーは嫌だなと思ったし。
―大学に入ってから苦労したことのひとつには、就活もあったよね。
就活に対しての自分の価値観を見出すことにめちゃくちゃ時間がかかりましたね。教職課程を取っていたので教育実習に行かなくちゃいけなかったんですけど、教員になるつもりは全然ないのに免許を取るためには行かなきゃいけないってテンションだったから全然楽しみじゃなくて。
でも実習に行ってよかったなと思います。自分の目でちゃんと現場を見て、やっぱりわたしは先生はやりたくないかもって判断ができたことはよかったかな。
いままでは自分がやりたいことじゃないならやりたくないって就活の仕方をしていたし、いまも基本的にはそのスタンスですけど、それでも自分が必要とされたこと、先生に向いているよと言われたことは大きかったかな。研究授業を見た先生たちから教員採用試験を受けていないことをすごく残念がられたのは印象的でした。
―教育実習後から帰ってきたときの表情は印象的だったな。そのあとのコーチ会議に対する姿勢もすごく変わったよね。
そうですね。いろいろ気持ちに区切りがついて、いままでは一生懸命やるのが当たり前だったけど、いまはそれだけじゃなくて、コーチ会議を一生懸命やることに意味があるなって思えました。
いまやりたいことをめちゃくちゃやっている感じがあって、それこそ1期生、2期生の無鉄砲だったころと同じくらい企画も立てたりして、むかしはなかった下の子と一緒にやりたいとか、なにかちょっとでも残したいなとか、みんなが頑張れる環境をつくりたいとか、支えたい気持ちがいまはあります。時間も気持ちもいままで通りめいっぱいかけて最後までやるんでしょうね。
わたし、このあいだ初めて、コーチ会議で全体案の企画が通ったんですよ。いままで全体案の企画を出しても対決になると勝てなかったんですけど、今回は全員がわたしの全体案をやりたいと言ってくれて。やっぱり企画立てるのが楽しいな。企画にこだわっているなって最近やっと気がつきました。
―この1on1 collegeを始める前に、実はキャンプ場でおれと一度会ってるんだよね。そのときも企画を立てるのが好きって言ってたよ。
あれは印象的でしたね。あのときのやり取りはずっと覚えています。(その後メンターになる)長谷川さんから「なんで企画を立てるのが好きなの?」と聞かれて、答えられなかったことがすごく悔しかったんですよね。
「キャンプの大きな全体案を立てることが好きだし、一方で誰かひとりにでも本当のねらいが届けばいい企画を立てることも好き」って言ったら、また「なんで?」と聞かれて、すごく答えに詰まったんです。
いままで聞かれたことに対してパッと答えることができていたんですけど、初めて答えられなかった。めちゃくちゃ覚えてます。たぶんずっと覚えてます。
―火を囲んで、飲んでたよね。
囲んでました。飲んでましたね。あれめちゃ楽しかったですね。
―では改めて、なんで企画を立てるのが好きなの?
ちゃんとかたちになるということがまずひとつ。大きい企画でも小さい企画でも、頭でやりたいと考えたものが書面になって現実になる。それにキャンプでは企画の価値も自分がやってきたことに対しての価値も反応が返ってくる。その企画を起こして実施するサイクルにずーっと病みつきなんでしょうね。
それに自分の中での企画に対する種類をわけられるようになった。みんなに届けたい企画もあるし、誰かひとりに届いてくれたらいい企画もあって、その違いが言語化できなかったんですけど、自分の企画でも、人が考えた企画でも、この企画なら結果がこうなることに意味があると、企画ごとに考えられるようになりました。企画の目的が届くのがひとりだとか全員だとかは関係なくて、この目的に届くためにいらないものはいらない、これは絶対にやるってめちゃくちゃはっきりしました。会議でも、この企画は楽しそうだけどここの目的に沿ってないから今回やるべき企画とは違いますと、はっきり言うことが多いです。いいね、だけど違うみたいな。
むかしはそれも自分がただ頑固だからそう思うのかと思っていたけど、いまは考えが明確だから言い切れるんだって思いますね。これまでコーチ会議のことはコーチ会議に出ている人にしか話せなかった。ラボのことを全然知らない人には話せないじゃないですか。でも長谷川さんはラボもコーチ会議もやっていたからなんとなく事情は知っていて、かつ、いまのコーチ会議は知らないから、話をしていてうまく自分のことを整理できたなと思います。1on1 collegeを始めて、自分自身にもコーチ会議に対しても迷いがあったのがどんどん整理されていって、下半期から上がってきた感じがありました。
―卒業後の4月以降のことは考えている?
あんまり考えてないですね。早く配属先が決まって欲しいかな。わたしが4月から就職するホテル関係の会社は勤務地が北海道から沖縄まであって、グランピングができる施設とか、ライトなキャンプができるような施設もあるんです。ホテル業種は全然視野に入れてなかったし、ホテルマンになりたかったわけでもないのにこの会社を受けたのは、シンプルにいま楽しいと思っていることと合っているから。性に合うかなって直感でしたね。それこそずっとこの会社で仕事を続けるならグランピングとかキャンプができる施設のほうに行きたいです。
でも、まずはとりあえず1年間与えられたところで修行すれば仕事に対しての向き合いかたとか、価値観とか、また出てくると思うので身をまかせるというか、そのときにやりたいことを見つけて、どんどんやっていけばいいかなって考えに至りました。
―選びかたに正解があるわけじゃないから直感でいいんじゃないかな。
やっぱりちゃんと考えた上での選択だったのが意味あるかな。最初は直感、それから考える、それでまた直感、それでいいやって思えた。最初に直感で選んだものと同じ結果だったとしても考える期間がなければ本当にこれでよかったのかって気持ちを一生持ち続けると思いますね。コーチ会議もこのまま頑張っていていいのか迷って、考えて、結果として頑張るほうの直感で合っていた。好きだったらなんで好きなのか、いやだったらなんでいやなのか。自分の優先順位についても、なんでこの順位なのか。直感の理由を考えるようになりました。だって、長谷川さんの質問に答えられなかったから。ははは。
―けっこう引きずっているなあ!
衝撃的でしたね。初対面の人との雑談であそこまでのことを聞かれるのが初めてだったんだと思います。でもよかったです。そこで終わっていたら、いまこうなってないじゃないですか。長谷川さんがワークショップをしに来てくださって、1on1 collegeの参加者を募集すると言ったときに、あのときのことがパッと思い出されて、わたしはあの質問に答えられるようになりたいって。
(2021.2.10、学年は当時)