“悔しかった“に気づき、肯定できて、原点になった
この春、美術大学の3年生になった今枝麻矢子さん。彼女が1on1 collegeを毎月のように利用し始めたのは、高校1年生の秋のこと。
彼女は当時、常に自己管理が求められるたくさんのレポート課題に苦しんでいました。他者と比較しては自己嫌悪に陥る日々。しかし、4年半にわたる1on1を経て、彼女はそれらを乗り越え、「やりたいことに邁進する日々」を手に入れました。
今回は、今枝さんが1on1を通じて手に入れた”あったかい”自己理解と、目の前の選択に納得して進むための視点について語ってもらいました。

今枝 麻矢子さん
大学3年生
<1on1 collegeとは>
1on1 collegeは、高校生・大学生が、自身の選択を最適化するためのツールです。社会人メンターが、1時間のオンライン1on1ミーティングを、無料・回数無制限で提供しています。1on1は、なんでも話したり、考えたりできるツールです。進路や就活について考えたり、最近興味のあることや悩んでいることを整理したり、自己理解を深めるために活用している学生もいます。様々な角度から質問をもらいながら、たくさんのことを「言語化」することで、自分の価値観、行動、目標や課題、優先順位が「整理」され、次の自分の「選択」が最適化されていくと考えています。
体験1on1はこちらから:https://www.1on1college.com/start
「自分で自分を管理する」しんどさ、他者比較から生まれる自己嫌悪
━━ まずは今枝さんが1on1 collegeを利用し始めるまでのことを教えてください。
高校1年生のときに、学校の集会に1on1 collegeの長谷川さんが説明に来てくれたのが最初です。親でも、先生でも、友達でもない「第三の大人」と話せるというキーワードに惹かれて。
当時は、先の進路を絞りきれず悩んでいました。「やりたいことを見つけたい」という思いもあり、なんか面白そうだなって直感的に申し込んだのがきっかけでした。
━━ 申し込んだ当時、今枝さんはどのような学生生活を送っていたのでしょうか?
私、実は生まれてから4歳まではメキシコ、10歳から13歳まではチリの日本人学校やアメリカンスクールにいた帰国生なんですね。中1のときに日本の中高一貫校に編入して、高2からは海外の大学受験資格が得られるディプロマプログラム(DP)というコースに進みました。これは国際バカロレア機構という団体が提供しているプログラムで、修了すると海外の大学を受験できる資格が得られるんです。
校則も制服もないし、中間テストもないんですよ(笑)。自由な代わりに、とにかくレポート課題がガンガン出る学校で。宿題みたいに「明日まで」とかじゃなくて、1ヶ月とか期間があるんです。だから、常に自分で自分を管理する能力がすごく問われる環境でした。
━━ 授業を聞いてテストを暗記するのとは、全く異なる筋肉を使いそうですね。
そうなんです。でも、当時の私には自己管理能力なんて全然なくて。いつもレポートの提出をギリギリまで後回しにしては、「なんで自分はこんなに課題が手につかないんだろう、後回しにしちゃうんだろう」って、ずっと自己嫌悪に陥っていたんです。周りのみんなは涼しい顔をして当たり前に課題をこなしているように見えたので、いつも提出前日の夜中に、半泣きになりながら必死にレポートを書いている自分がどうしても許せなくて。他者と比較しては自分を責めていました。
1on1を始めた初期のころは、そんな日々のモヤモヤをただただ話していましたね。
「怠けている」のではなく「思考を広げている」だけ。自分を責めなくなった日
━━ 1on1では、毎月どんな会話をするんですか? 友達に相談するのと何が違うんでしょう。
友達や家族だと、「こうしたらいいんじゃない?」ってアドバイスをくれることが多いじゃないですか。でも、1on1のメンターである長谷川さんは、ほとんどアドバイスはしてくれないんですよ。ただ、私が言ったことに対して、ひたすら「なんでそう思ったの?」とか「逆にこうは考えられなかった?」って、疑問を投げかけ続けてくれるんです。
━━ 自分の考えを、ただひたすら打ち返し続けるような。
そう、それがすごく新鮮で。例えば 私が「どうしてもレポートが後回しになっちゃう。自己管理ができないダメな人間なんだ」って相談したことがあったとしますよね。そしたら長谷川さんが、さらっと「そもそも、レポートを書くこと自体が苦手っていう可能性はある?」って聞いてくれるんです。
普通なら、能力がないって責められているように感じるかもしれないですよね。でも長谷川さんはただフラットに、私が勝手に信じ込んでいた前提を疑ってくれた。
そこから話していくうちに、私は「思考を外に広げていくのはすごく好きだけど、それを一つに集約して論文にまとめる作業がものすごく苦手なんだ」という、自分の根本的な特性に気がついたんですよね。
━━ 怠けているのではなく、得意・不得意の特性に気づいた。
そうなんですよ! 思考が外に広がりやすい特性の裏返しで、集約するのに苦労していただけなんだって。 そうやって自分を客観的に見られるようになってから、ものすごく救われました。良い悪いという評価から解放されて、自分のありのままをフラットに捉えられた、最初の大きな変化だったと思います。

答えのない美術に泣いた日々。「美大=絵が描ける人」という思い込みを解く
━━ そこから、今枝さんは美大に進学されるわけですが、もともと小さいころからアートの道に進むと決めていたのですか?
いえ、全然そうじゃなかったんですよ。 むしろ、DP授業のなかで一番苦労して、泣いたりするほど辛かったのが「美術」の課題だったんです。
まず「自分の表現したいテーマに対して、どんな表現方法を選ぶのか」という技法の選択から自分で決めなければならない。その上で、「なぜ今あなたがその作品をつくる必要があるのか」「作品をつくる意味とは何なのか」を説明しなきゃいけないんです。
━━ 答えがない問いですね。興味があったとしても、かなり苦しい課題に思えます。
本当に辛かったです(笑)。でも、それを乗り越えた瞬間があって。 あるとき、モネの『ルーアン大聖堂』という、時間帯によって光の表情が変わる連作を見たんです。
そのときに「確かに、朝の光ってこんな感じだし、夕方の光もこういう雰囲気だよね」って、なんか初めて美術作品を通して作家の感覚にめちゃくちゃ共感できたんですよね。
━━ 共感、ですか。
はい。美術って言葉だけで説明するものではなくて、私の心の中にあるものを伝える「表現」なんだって、すごく腑に落ちた瞬間があって、そこから一気に美術が面白くなっていったんです。
でも、当時の私には「大学で美術を学ぶのは、小さい頃からずっと絵ばかり描いてきた特別な才能がある子たちだけ」という前提が勝手にありました。それに引っ張られて、自分の選択肢から勝手に除外していたんですよね。
━━ その前提を、1on1はどうやって解きほぐしていったんでしょう。
私は筑波大学が第一志望だったんですけど、1on1で大学で学部の話になったとき、「美術が好きなら美術を学べばいいんじゃない?」って問いかけてくれたんです。よくよく調べてみたら、筑波大学には芸術専門学群という美術を学べる学部があって、美術の歴史や理論を学ぶ「芸術支援領域」という、まさに私が求めていた理論のコースがありました。
「なんだ、理論から美術を学んでもいいんだ。自分も大学で美術をやっていいんだ!」って気づいた瞬間、急に目の前の霧が晴れて、選択肢がバーンと現れたんですよね。選択肢が見えたからにはもう行くしかないなって。

「考えるのは私」──1on1がなくても、自律した思考回路をインストールする
━━ 大学に進学されてから、今年で3年目ですね。現在はどのようなことを勉強されているんですか?
芸術学科で、主に東洋や西洋の美術史や、美術館の展示計画、あとは学芸員や教員の免許を取得するための授業を履修しています。
━━ 大学に入ってから、1on1のスタイルや、長谷川さんとの関係性に変化はありましたか?
ものすごく変わりましたね。高校生までは、最初から最後まで長谷川さんが問いかけてリードしてくれていた感覚だったんです。でも大学に入ってから、長谷川さんが最初に「この1ヶ月どうだった?」と聞いてくれて、あとは「今日はこの時間をどんな風に使いたい?」って内容を任せてくれるんです。それで私が自分でペラペラと喋っているうちに、自分で「あ、私って実はここに興味があったんだ!」って着地点に気づくようになりました。主役というか「考えるのは私」になったな、という感覚がありますね。
━━ 月1回、画面越しに1時間話すことで、どんなふうに自分の頭が整理されるものなのでしょうか?
日常生活の中で、なんかモヤモヤするな、悔しいな、という「点」の違和感が、心の中にポコポコ浮かんでくることってありますよね。1on1は、その点を全部言葉にすることで、「線」につなぎ合わせていく時間なんです。
最近、印象的だったことがあって。たまたま出会った方々と現代アートについて話したとき、かなり批判的な意見を言われたんですよね。私は美大にいる人間として、「なんで現代アートの面白さが分かってくれないの!」と、ものすごく悔しくて、必死に論戦を交わしたんです。
━━ その悔しさを、そのまま1on1でぶつけた?
はい、もうそのまま(笑)。自分でも「ただ感情的になって、愚痴を言っているだけだな」って思っていたんです。でも、長谷川さんと話していくうちに、あることに気づかされたんですよね。
それまではずっと、すでに学問としてある美術教育に興味があると思い込んでいたんです。つまり「どうやって美術の面白さを人に教えるか」っていう、教育のテクニックに関心があるんだ、って。
━━ すごく自然な流れに思えます。
でも長谷川さんと話しているうちに、「いや、私が本当にモヤモヤしているのは、教え方のテクニック以前の問題だな」って気づいたんです。
私が本当にショックで悔しかったのは、世間の人たちが「え、そんな現代アートなんて意味不明だし、自分には関係ないや」って、最初から視界にすら入れていないこと。その無関心だったんですよね。
美術が好きな人と、そうでない人との間にあるギャップそのものに、私の原始的な興味と悔しさの原点があったんだ、って気づけたんです。
━━ その気づきを得てから、実際の大学生活や、将来の進路への向き合い方はどう変わっていったんですか?
まず、自分が将来やりたいことの解像度が、一気にカチッと上がったんですよね。「アートを愛する人と、世間の圧倒的な無関心のギャップを埋めるために、自分は何ができるだろう」って考えるようになって。それで、将来的には学校でも美術館でもない、アートと人を繋ぐ「第三の場所」みたいなものを自分でつくれたらいいな、と思うようになったんです。
いきなりそこを目指すのは難しいので、まずは美術館の「教育普及室」という、まさにそのギャップに現場で向き合っている場所で働いて、経験を積みたいなと思っていて。そのためにも、大学を卒業したら大学院に進んで、美術の理論をもっと深く突き詰めようと決めました。
今、大学のゼミでも、アーティストの方を呼んで展覧会を企画する活動をしているんですよね。「無関心な世間とアートをどうつなぐか」という問いを、ゼミの活動を通してリアルに実験している最中なんです。
━━ 頭の中で整理された問いが、今度は実際の行動を力強くドライブさせている。
そうなんですよ。こういう対話を4年半も毎月続けてきた最大の成果は、1on1の場以外の日常でも、「なんで私は今こう思ったんだろう?」と自問自答する思考回路が、完全に頭の中にインストールされたことだと思います。
1on1がなくても、自分で自分の感情の動きを冷静に観察して、モヤモヤから本質的な気づきを救い出せる「モヤモヤ見つけ上手」になれました。
.jpg)
逆算する生き方を捨てたら、目の前の選択を愛せるようになった
━━ 将来のことや就職について考えるとき、周りが就職活動を始めたり、内定をもらったりしているのを見ると、焦りや不安を感じることはありませんか?
周りのみんなが「将来こうなりたいから、今この企業に入らなきゃ」って就活を頑張っているのを見ると、正直前の私だったら「自分も早く何か決めなきゃ」って勝手に焦っていたと思うんですよね。でも、今の私は不思議なほど焦っていなくて。それは、1on1で進路の相談をしたときに、長谷川さんが質問してくれた考え方にすごく救われたからなんです。
━━ どんな考え方だったんですか?
「将来を考える道には2種類ある。ゴールから今を逆算していく『逆算型』と、今目の前にある選択肢の中で一番やりたいものを選び、それを積み上げていく『ビルドアップ型』。今枝さんはどちらが合っていると思う?」って。
私はずっと、自分のことを「興味が常に広がりやすくて飽きっぽい、まとまりのない人間だ」とネガティブに捉えていました。でも、その考え方を聞いて「私は、目の前の選択を転々と繋いでいくビルドアップ型の生き方のほうが、圧倒的に合っているし納得できる」と思えたんです。
だから、大学院に進学してもっと美術の理論を突き詰めたいという今の選択も、今一番やりたい目の前の選択肢として、自信と納得感を持って選べています。
冷たい自己分析より、自分をまるごと愛する“あったかい”自己理解
━━ 1on1での気づきや納得感は、一般的な「自己分析」や「友達への相談」と、何が違うのでしょうか。
親や美大の友人、高校の友人など、誰もがそれぞれの立場や関係性ゆえのバイアスを持っていますよね。美大の友人はお互いの苦労が分かるから「なんでもいいじゃん」って甘やかし合ってしまうし、普通の大学生の友人は一般的な就職活動の価値観で測ろうとしてしまう。
でも、1on1のメンターは全くの第三者で、立場がないからこそ、完全にフラットな視点で向き合ってくれます。
━━ 立場がないから、フラット。
誰でも、相談を受けたらどうしても「こうしたらいいじゃん」って、アドバイスを言いたくなっちゃうじゃないですか。でも長谷川さんって、それが一切なくて、ただ問うだけなんですよね。
長谷川さん、多分、本当に疑問に思ってるだけなんですよ。アドバイスとか、正解に導こうとせず、ただ知りたいだけ。だからリラックスして話せる。
だから、就活とかでよくある「自己分析」とも全然違っていて。 自己分析って、自分の長所や短所を、エントリーシートの枠組みや、社会的に評価されやすい基準に無理やり落とし込んでいくような、どこか冷たい作業に感じてしまうんです。
1on1はそうじゃない。社会の中における自己否定みたいなところって、他者との比較から生まれるものだと思うんですよね。でも1on1は、そういう社会的な前提や指標をすべて崩して、私を解放してくれる。私の「悔しかった」「悲しかった」という感情そのものを、ただただ受け入れて、言語化させてくれる。それも社会的に使いやすい言葉に無理に落とし込むんじゃなくて、もっとシンプルに、小さな子供が友達と喧嘩して悔し泣きしているのを眺めているような気持ちになれるというか。「そっか、悔しかったんだ私。よしよし悲しかったね」って、自分のその感情をまず肯定してくれる。自分を突き放す分析ではなく、自分という人間そのものを理解し、愛するための、ものすごくあったかい時間なんですよね。
私は自分を肯定できるようになって、劇的に生きやすくなりました。自己肯定感はめちゃくちゃ高いと思います(笑)。
それだけでなく、他者に対してもものすごく寛容になれたんですよね。以前は「人はみんな分かり合えるはずだ」と頑なになって、分かり合えない人にイライラしていました。でもいまは、「ただ単に、馬が合わなかっただけなんだな、違う人間だもんな」とフラットに捉えられるようになったんです。
大人を壁打ち相手として利用する
━━ 最後に、これから1on1 collegeを利用しようか迷っている学生や、この活動をサポートしたいと考えている大人に向けて、今枝さんにとって1on1がどんな場所だったのか教えてください。
1on1は、私にとって心の中の石置きのような存在です。日常のなかでふわふわと浮いている思考や感情を、月に1回、1on1という場所で言葉にして、一旦カチッとそこに置いておく。 そうすると、日常の中で迷った時にも、いつでもその場所に立ち返ることができるんです。
私はペラペラ喋るのが好きなので、聞き手である長谷川さんを最強の壁打ち相手として利用している、みたいな感覚なんですけど(笑)。
1on1は、一言で言ってしまえば「少し離れた大人と、月に1回オンラインで話す」という、本当にシンプルなものなんですよね。 だからこそ、利用する学生の数だけ、全く違う形の1on1があっていいと思います。まずは1回、多くの人に体験してみてほしいですね。
聞き手:田辺宏太
(2026.6.14、学年は当時)
.png)