「具体的な答えではなく

 考え方の選択肢をもらってる」

鈴木 光さん

美大での油画専攻から、日本画・アニメ・アパレルデザインまで

多摩美術大学2年

在籍:2019.6 - 現在

#大学生 #美大 #アート

(聞き手:長谷川、学年はインタビュー当時)

最近は何を描いてるの?

 

自画像を描こうかなと思って。昨日成人式だったんですよ。成人って考えたときに、今の顔を描いときたいなと思って。絵を描く人間として、描いとかないといけないような気もしていて。

表に出す予定なのは、高校時代の友達と作ってるアニメーション。自分が脚本も担当してます。夏に向けてやって、発表するのは秋の学園祭頃に合わせたいなと。他の美大で全く別のことを勉強してる人たちとの制作なので、新鮮で、めちゃくちゃおもしろいですね。

それは楽しみだね。

今日はこれまでを振り返りながら話したいんだけど、出会った5月頃の自分のことって覚えてる?

 

だいぶ今よりもめちゃくちゃだったと思います。(笑)もやもやで、頭の中がぐちゃぐちゃ。行動やビジュアルは普通だったと思うんですけど、頭の中がかなり混雑してて、どうしたもんかなと。

当初、1on1 collegeに何を期待して参加したの?

 

自分の環境が、学校と大学と自宅と、あと何人かの友達とかバンドとかしかなくて、もう1つ欲しいなと思って。全部にもやもやしてたので。家は楽しかったから救われてたんですけど、学校もバンドももやもやしてたので。もっと吐き出せる場所がほしいというのがうっすらあって。特に学校に関して、具体的に言うと転科したいとまで思ってましたし、独特な噛み合わなさを感じてたんですよね。

当時の「噛み合わなさ」って、改めて振り返ると、何だったんだろうね。

 

油画専攻にいるけど別にそんなに油絵を描きたくないとか、今の場所が自分にちゃんと合ってるのかとか考えてた。学校自体は好きだったけど、(キャンパスのある)橋本の雰囲気が嫌だとか言ってたし、教授という存在自体が敵に思っちゃってたし、いろいろなものに対するフラストレーションが溜まってて。そんなこと考えてることも正しいのか?とか、ぐるぐるしてたんですよね。

でも今振り返ると、単純に自分のものの見方の問題かなと。環境的要素というより内面的な要素が大きかったのかなと思ってて。現実的に今その環境は全く当時と変わってないですけど、今はすごく満たされてるというか、いい感じの状態まで来てるんで。

参加してからの7ヶ月を振り返って、一番の変化はなんだろう?

 

自分の中へ中へ(意識が)向いてたのが、周りに向き始めたっていうのはすごく大きいと思ってて。例えば橋本に関しては、ちょっと外に出て散歩してみたら結構いい自然公園があったり。隣のクラスに音楽の趣味がどんぴしゃのやつがいて、仲良くなったり。これらはわかりやすい現象としてあったことですけど。

内向きが、外向きになった。

 

一番大きかったのはそこな気がする。(自分の外のことを)知ろうともしなかったし、それによってそもそも考えることすらもできないし。大学入るとよく自分探ししがちじゃないですか。急に空間が開かれて、知らない人ばっかになったときに、頼りになるのがもう自分しかいなくなっちゃうんですよ。それで自分と向き合いがちになった気がする。

外に向いて得られたことは?

 

本当にいろいろですけど。今の環境があっているかどうかみたいな話でいっても、環境がどういう風な人たちでできてるのか知って、悲観的に考えてた部分が、割とポジティブなものになったりとか。

例えばどういうこと?

 

具体的にいうと、教授から、自分が理解できないことを言われると、教授みんなが敵だと思っちゃってたんですけど、よく聞いてみるとそれにも意味があったり、勉強になることを言ってくれてる人や、実際におもしろいものを作っている人がいたりとか。全然敵じゃなかったんだと気づきましたね。

あと周りの学生では、今までは人の作品を見ることはするけど、そんなにのめり込んで見ることはなかった。人の作品を身構えずに見てみると、めちゃくちゃ頭おかしいんだなとか、本当におもしろいだなって思うことがたくさんあって。心から感動した作品もありました。

7ヶ月のなかで、何がそうさせたんだろう?

 

学校でもなければ自宅ではなくて、第三の場所みたいなところで、自分の今の状況とかを話すのって、すごい整理になってたのかな。長谷川さんから具体的に「それは〇〇だね」とか「その答えは〇〇だよ」とかは返ってこないじゃないですか。でも逆にそれが良くて。その代わりに意表を突くことを聞かれて、答えてるうちに「あれ、おれの言ってることって本当にそうなのか?」と思ったりとか、考えなきゃいけなくなったりとか。予想してなかったことを聞かれると、自分の組み立てた答えが崩れる訳じゃないですか。それが一番おもしろいと思います。

それで内側に向いてたのが、外に向き始めた。(1on1 collegeが)考え方の仕組みがそうなるようなシステムな気がしてて。勝手に。

何か具体的に覚えてる?

 

例えば「なぜ転科したいのか」も、自分に言い聞かせる理由と、人に説明する理由って結構ちがうんだなと思って。自分に対してだと「そもそもこの環境が合ってない」とかだったけど、聞かれれると実は漠然とした理由で、もっと本当は別のことを考えてたんじゃないかとか、別のことが理由になってないと自分でも決めきれないんじゃないかとか気づいて。それを頭の中で言葉にして伝えなきゃいけないおかげで、整理がついたのかなと思います。

あと、内容として、転科とか不満とかって、まず教授に直で話せないじゃないですか。友達に話すと「急にどうした」って思われるし。親に話すと本気で悩んでんのかって心配されちゃうし。ってなったときに、一番ちょうど良かった。

改めて転科の意思決定をするプロセスを振り返ると、最初はもう、迷ってる訳でもなく転科する方向だった。

 

完全に、準備してましたね。転科する前提で、どう決定付けるかみたいなことを話してました。

一番最初の段階で、転科しますってことを伝えたじゃないですか。そして準備しながら同時並行的に、なぜ今の状況にあんまりしっくり来てないのかも度々話したじゃないですか。それが1個ずつ整理されていく中で、逆に転科する必要があるのか?と考え出して。要するに、転科するメリットやデメリットは何だろうっていうことを、すごいフラットに冷静に考えることができた。感情は置いて、実際にお金とか時間とか環境とか、システムとして転科することはどうなんだってことを具体的に考えて。結果として、転科しないことで落ち着いたんですけど。10月くらいでしたね。

転科しなくてもこういうことができる、って気づけたのは大きかったよね。

 

油画に身を置きながらできることがあるって。大きかったですよね。自分の中で考えて組み立てていったことじゃなくて(転科希望だった)日本画専攻の講評会とか研究室に話聞きに行ったりとか、日本画の学生に話を聞いたりとか、外に向いて実際に動いたことによって起きたことな気がします。

 

そしてその結果、日本画を想像したときに、今より良い環境だとは思わなかった訳だよね。

 

はい、申し訳ないけど。(笑)向こうも向こうで大変なんだなと。

当初の一番の課題だった「転科」が解決されてからの1on1ミーティングって、何か変わった? おれが聞くのも何だけど、何で続けてるの?

 

細かいぼんやりとしたことで話したいことがあったりして、そういったことを同じ仕組みで考えられてる。

例えば大学でも、不満みたいのをアウトプットできる場所はなくて。「転科」のような大きなことではなくても、答えが複数出てもいいようなぼんやりとしたこと。例えば何だろう、こういう制作がしたくて、いくつかパターンが頭の中にあって、どういう雰囲気がいいかなみたいなことを考えていたときに話してみたり。実績として、経験として、ここが一番だから続けてます。

ニュアンスが難しいんですけど。最終的に当人の僕に委ねられてる部分が大きいとは思うんですけど。でも考える仕組みとして、うまい具合に、選択肢を与えてもらってるっというか。具体的な答えではなくて、考え方の選択肢を与えてもらってるのかな。次に何やるかじゃなくて、何やるかをどう選ぶか、みたいな。割とそれって、すぐに必要という人はいないけど、でも一番必要だったりするじゃないですか。

最後に、どういう人が、これに参加するといいと思う?

 

すべての大学2年生におすすめしたいですね。1年生は大学入ったばっかで訳わかんなすぎて、でもそれで良い部分もあるじゃないですか。でも2年生はちょっとはわかり始めないといけない。しがらみなく一番何かに集中できる3年生が控えてる訳だし。

月に1回、月末に1on1ミーティングがあるじゃないですか(※鈴木さんの場合)。これによって月がまとめられてる感があって。僕の人生上では一番いろいろ入ってくる時期で、いろいろ起こってる時期で、訳わからなくなっちゃう。そういう時期にそうやって丁寧にまとめられてるっていうのが大切なのかなと。ここでは自分の中で整理がちゃんとできる。3年時に何かに集中するっていうのは、やっぱり環境とか自分の心理状態が落ち着いてないと取り組めないことだと思ってて。1年生の頃に比べたら集中度が全然ちがう。

 

それは嬉しいな。

もう1つ、1on1 collegeに参加してる他の学生へのアドバイスってある? 使い方というか。

 

何というか、自分の中にある、どれにもカテゴライズされないような、でも親には話さないよなっていうことって結構ある。転科も僕の人生では大きなことではあるんですけど、それを大学の相談窓口に相談するかっていうとちょっと気が引ける訳で、そういったことってみんなあると僕は思ってて。そこまで切実ではないけど、でもそれによってちょっともやもやしてるよなっていう悩みが。中身は人によってだと思うんですけど、みんなにあると思う。それをこの場で話してみると、一番ぴったりくるんじゃないかな。

 

 

「もやもや」ね。似てる言葉で、他の参加者は「悩んでる人」に良いんじゃないかと表現していたよ。

 

そうですね。僕のイメージしやすい、悩んでいる人たちが大学2年生。一番ぐちゃぐちゃしてる時期。周り見てても結構います。こいつにおすすめしたいなっていう人は。大学2年生ってすごい時期だと思いますよ。浪人してなかったら成人も迎える訳で、もう次は3年生で。すごい時期だなって。がむしゃらというか。経験しながら思う。

今思えば、大2はおれも狂気の日々だったよ。(笑)

 

やっぱそうですか。(笑)